「知覚動考(ともかくうごこう)」が教えてくれた、偶然の連鎖。

こんなことって、本当にあるのだろうか。
今日、人と人とのつながりの不思議さ、そして、行動することの大切さを、これほど強く実感した日はなかった。
きっかけは、たった3日前のこと。
元校長先生と飲む機会があるので、かつて私が担任をしていた教え子を誘ってみた。その教え子は、ちょうどその元校長先生が校長を務めていた頃の中学1年生だった子だ。
久しぶりに顔を合わせ、昔話から近況まで、いろいろなことを語り合った。
ところが、驚きはここから始まった。
二軒目に移動したとき、店内に見覚えのある顔があった。
「えっ? まさか……」
高校時代、私が所属していた部活動とは別のスポーツ部の監督をされていた先生に、あまりにもよく似ている。
思い切って声をかけてみた。
すると、なんと、ご本人だった。
さらに驚いたのは、その先生が現在勤務されている高校が、先ほど一緒に飲んでいた教え子の出身高校だったこと。そして、そこには、その教え子が高校時代に教わった先生もいらっしゃった。
しかも、その先生は、私の弟と同じ学年というつながりまであった。
もう、これだけでも十分に驚く話だ。
しかし、まだ終わらない。
終電に乗ろうと駅に向かったとき、今度は弟が小学校勤務時代に教えていた教え子が、声をかけてきた。
話を聞くと、なんと、その子は、今日一緒に飲んでいた私の教え子の弟と大親友だったという。
何ということだろう。
高校時代の恩師、かつての教え子、その教え子が通った高校、そこで教わった先生、私の弟、そして弟の教え子。その弟の教え子と、私の教え子の弟までが親友だった。
一つ一つのつながりは別々のものに見えるのに、たどっていくと、すべてがどこかで結び付いている。
まるで、見えない糸が人と人とをつないでいるかのようだった。
そして、最後に、今日という日をさらに特別なものにする出来事が待っていた。
駅で出会った弟の教え子が、こんな話をしてくれた。
「都道府県名を覚える授業、先生から教わったことがすごく印象に残っていて、今でも覚えています」
弟がかつて教えた授業を、何年も経った今でも覚えていてくれたのだ。
実は、私も今日、小学4年生を対象に、都道府県名を覚える授業を行ったばかりだった。
しかも、その授業の指導案を仲間の先生たちに配付しようと、今日、印刷して持ってきていた。
その話を聞いた私は、思わず持っていた指導案を手渡した。
何という巡り合わせだろう。
弟がかつて教えた授業の思い出と、今日、私が実践した授業が、思いもよらない駅で、一人の教え子を介してつながったのだ。
偶然にしては、できすぎている。
今日一日を振り返ると、あることに気付かされる。
もし、3日前に教え子を誘っていなかったら。
もし、二軒目に行かなかったら。
もし、見覚えのある先生に声をかけなかったら。
もし、終電の駅で足を止めなかったら。
これほどの出会いも、つながりも生まれていなかったかもしれない。
もちろん、すべての行動が何かにつながるわけではない。けれど、動かなければ生まれない出会いがある。声をかけなければ見つからない縁がある。
ここで思い出した言葉がある。
「知覚動考」
知って、覚えて、動いて、考える。
この四文字、実は別の読み方がある。
「ともかくうごこう」
考えてから動くのではなく、まず動いてみる。人に会う。声をかける。誘ってみる。足を運んでみる。
すると、そこで何かが起こる。新しいことを知り、誰かとつながり、そこからまた考えが広がっていく。
今日の出来事は、まさにそれを教えてくれた。
そして、もう一つ、心に刻んでおきたいことがある。
人は、人の中で人となる。
人との出会いが、自分の世界を広げてくれる。人との関わりが、自分を成長させてくれる。そして、自分が誰かに伝えたこと、教えたこと、かけた言葉も、知らないところで誰かの中に残り続けている。
教師の仕事も同じだと思う。
今日教えたことが、明日すぐに成果となって表れるとは限らない。何年も経ってから、ふと思い出してもらえることもある。自分の知らない場所で、誰かの人生を支えるものになっていることだってある。
そう考えると、教育とは、目の前の子どもに何かを教えるだけの仕事ではない。未来のどこかで、誰かと誰かをつなぐ種をまく仕事なのかもしれない。
今日の偶然の連鎖は、私にそんなことまで考えさせてくれた。
人生は、自分一人でつくっているようで、実は多くの人とのつながりの中でつくられている。
そして、そのつながりは、じっとしているだけでは見えてこない。
だからこそ、これからも動こう。
人に会おう。声をかけよう。誘ってみよう。新しいことに挑戦しよう。
どこで、誰と、どんな縁が生まれるかなんて、誰にも分からない。
一歩動いた先に、思いもよらない出会いが待っているかもしれない。
そして、自分が誰かに届けたものは、いつか、思いもよらない場所で花を咲かせるかもしれない。
今日という一日が、それを教えてくれた。
知覚動考。ともかく動こう。
人が人の中で人となる。
やっぱり、人との出会いって、面白い。そして、素晴らしい。

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