サッカーの試合で、黄色でも赤色でもない、一枚の「緑色のカード」が出されることがあります。その名も「グリーンカード」。小学生年代のサッカーで使われるこのカードは、反則をした選手に示されるものではありません。相手を思いやる行動やフェアプレーをした選手に贈られる、特別なカードです。
例えば、倒れた相手に手を差し伸べたとき、自分のチームのボールと思われていても「最後に触ったのは私です」と正直に伝えたとき、相手選手のけがを気遣ったとき。そんな姿を審判が見つけると、試合を止めてグリーンカードを掲げます。得点が入るわけでも、試合が有利になるわけでもありません。それでも子どもたちは、とても誇らしそうな表情を見せます。それは、「いいプレー」を認められたのではなく、「いい人としての行動」を認められたからです。
私は、この制度を知ったとき、「学校にもグリーンカードがあったらいいな」と感じました。私たちは、忘れ物をした、話を聞いていない、ルールを守れなかったなど、どうしてもできていないことに目が向きがちです。もちろん、必要な指導は欠かせません。しかし、それと同じくらい大切なのは、子どもの素敵な行動を見逃さず、認めることではないでしょうか。
落とし物を届けた子、困っている友達に「大丈夫?」と声をかけた子、掃除が終わった後も黙って最後まで片付けをしていた子。そんな姿を見つけたら、「ありがとう」「今の行動、素敵だったね」と伝える。その一言が、子どもの心に残り、「またやってみよう」という気持ちにつながっていきます。
教育心理学では、「認められた行動は繰り返されやすい」と言われます。叱られたからやめるのではなく、認められたから続けたくなる。この原理は、子どもだけでなく、大人にも当てはまります。だからこそ、学校には「できていないことを探す文化」だけでなく、「できていることを見つけて伝える文化」が必要なのです。
私は、「学校は幸せになるためにある」と考えています。勉強や運動ができるようになることはもちろん大切です。しかし、それ以上に、人を思いやること、正直であること、感謝を伝えること、困っている人に手を差し伸べることなど、人として応援される行動ができるようになることも、学校で育みたい力です。
サッカーのグリーンカードは、その大切さを私たちに教えてくれます。学校にも、教室にも、職員室にも、目には見えないグリーンカードが飛び交う毎日であってほしいと思います。できていないことを指摘するだけでなく、できていることを見つけて認め合う。そんな学校であれば、子どもも教師も、毎日を前向きに過ごし、互いを応援し合える温かい学校になっていくはずです。
今日、あなたなら誰にグリーンカードを贈りますか。その一枚が、誰かの自信となり、明日への一歩を後押しするかもしれません。

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