なぜ、真面目で一生懸命な先生ほど、たった一人で壁にぶつかり、誰にも言えずに心を折られてしまうのでしょうか。
かつて、初任者の過酷な現実の中で孤立し、154日という短さで教職を去ったある若手教師の話を聞いたことがあります。
誰も助けてくれない教室で限界を迎え、逃げ出すように教壇を降りたあの日の絶望。
そこから這い上がり、再び教壇に立ち、そして今は指導主事として若い先生たちを支えているその人の姿を知ったとき、深く胸を打たれるものがありました。
個人の気合や根性だけでは、現場の心は守れないということです。
実際の現場を思い描きながら、教師を孤立させない「個と組織」の本質を探ってみます。
教職員のメンタルヘルスを考えるとき、個人の努力や耐える力だけに頼るアプローチには限界があります。
かといって、形骸化した組織の仕組みだけでも、傷ついた心は救えません。
大切なのは、目の前の人に寄り添う個へのアプローチと、職場全体をアップデートする組織へのアプローチを両輪で回すことです。
まず、個へのアプローチの基本は、日々の小さな変化に目を向け、決して一人で抱え込ませないことから始まります。
具体的なステップはこうです。
声かけ・日常観察、面談による困り感の把握・傾聴、早期発見・抱え込み禁止、必要な支援の明確化・業務量調整・個別支援・助言、専門機関につなぐ。
覚えやすく言えば、「気付く、聴く、抱え込ませない、支える、つなぐ」です。
日頃の何気ない声かけや観察から小さなサインに気づき、面談でじっくりと困り感に耳を傾ける。
そして何より重要なのは、問題を一人で抱え込ませないことであり、業務量を調整しながら個別支援を行い、時には専門機関へと確実につないでいく。
これらは、個人を責めず、その人の尊厳を守るための大切なプロセスです。
一方で、個人のケアを確実なものにし、職場全体で心を守る土台となるのが組織へのアプローチです。
こちらは、業務改善、相談体制、学年や分掌・管理職など組織で支える協働体制、研修・啓発、PDCA。
覚えやすく言えば、「減らす、相談できる、支え合う、学ぶ、改善する」です。
無駄な業務を減らして負担を軽くし、誰もが気軽に相談できる体制をつくる。
学年や管理職が一体となって組織で支え合う協働体制を整え、研修を通して組織全体で学び、PDCAを回して改善していく。
個人の頑張りに依存するのではなく、業務や相談のあり方そのものを組織としてアップデートしていく視点が不可欠です。
結局のところ、教職員を一人で抱え込ませず、組織全体で温かく支え合う仕組みをつくること。
かつて深く傷ついた経験を持つその人が、のちに他の者に寄り添うための「最高の武器」に変えていったように。
それが、結果的に子どもたちと向き合う教師自身の心を守り、学校全体を安心できる力強い場所へと変えていきます。
あなたの周りには、困ったときに「助けて」と言えるつながりや、お互いを支え合う環境がありますか。
明日から、隣にいる同僚のちょっとした変化に気づき、声をかけること。
そこから、誰も孤立させない温かい一歩を始めてみませんか。

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