第6回 「できた!」が子どもの未来を変える〜ドーパミン的幸福と成長実感〜

「できた!」が子どもの未来を変える

皆さんは最近、「できた!」と心から感じたことがあるだろうか。

難しい仕事が終わったとき。苦手なことを乗り越えたとき。目標にしていたことを達成したとき。そんな瞬間に、私たちは嬉しさや達成感を感じる。

樺沢紫苑さんは、この達成感や成長実感から生まれる幸福を「ドーパミン的幸福」と呼んでいる。

目標を立てる。
挑戦する。
できるようになる。
認められる。

その過程で分泌されるドーパミンは、人に前へ進むエネルギーを与えてくれる。

学校はまさに、この「できた!」を積み重ねる場所である。

漢字が書けるようになった。
縄跳びが跳べるようになった。
友達の前で発表できた。
苦手な教科で点数が上がった。

一つ一つは小さなことかもしれない。しかし、その小さな成功体験の積み重ねが、「自分にもできる」という感覚を育てていく。

私は教育の中で、この「自分にもできる」という感覚ほど大切なものはないと思っている。

なぜなら、人はできると思えることに挑戦するからである。

反対に、どうせ無理だと思っていることには挑戦しない。

だから子どもたちには、成功体験が必要なのである。

ただし、ここで一つ気を付けたいことがある。

ドーパミン的幸福だけを追い求めると、人は苦しくなることがある。

もっと勝ちたい。
もっと評価されたい。
もっと結果を出したい。

その気持ちは成長の原動力になる一方で、結果だけを求めるようになると、うまくいかなかったときに大きく落ち込んでしまう。

だから樺沢さんは、幸福には順番があると言う。

まずセロトニン的幸福。

健康と安心。

次にオキシトシン的幸福。

つながりと信頼。

そして、その土台の上にドーパミン的幸福がある。

私はこの考え方にとても共感している。

安心できる場所がある。

応援してくれる仲間がいる。

だから挑戦できる。

だから「できた!」が生まれる。

この順番が大切なのである。

学校でも同じだ。

失敗したら笑われる教室で、子どもは挑戦できない。

分からないと言えない教室で、学びは深まらない。

助けを求められない環境で、人は成長しにくい。

しかし、安心できる。

仲間が応援してくれる。

失敗しても大丈夫だと思える。

そんな環境があると、人は自然と挑戦するようになる。

最近、「主体的な学び」という言葉をよく聞く。

しかし主体性とは、「自分でやりなさい」と言われて生まれるものではない。

挑戦してみたい。

やってみたい。

できるようになりたい。

そんな内側から湧き上がる意欲によって生まれるものである。

そして、その意欲を支えているのが、小さな成功体験なのである。

私はサッカーの指導でも同じことを感じる。

最初から上手な子はいない。

失敗を繰り返しながら少しずつ成長していく。

リフティングが一回増えた。

パスがつながった。

試合でボールを奪えた。

その一つ一つの「できた!」が、次の挑戦への原動力になる。

学校も同じではないだろうか。

100点を取った子だけが成功ではない。

昨日できなかったことが今日できた。

前より少し成長した。

その変化を見つけ、認めることが大切なのである。

だから私は、子どもたちを他人と比べるのではなく、その子自身の成長を見たいと思う。

昨日の自分と比べてどうだったか。

半年前の自分と比べてどうだったか。

そこに目を向けることで、本当の意味での成長実感が生まれる。

「毎日がスペシャル」

私はこの言葉が好きである。

なぜなら、成長は特別な日に起こるものではないからだ。

毎日の積み重ねの中で、人は少しずつ変わっていく。

その小さな変化に気付き、「できたね」と声をかけてもらえることが、人を前向きにする。

学校は、失敗しない人を育てる場所ではない。

挑戦できる人を育てる場所である。

そして、「できた!」という喜びを積み重ねながら、自分の可能性を信じられる人を育てる場所なのである。

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