「勝つためだから。」
そう言って、今日も一人の選手をベンチに座らせた。
指導者は、一人を試合に出さなかったと思っている。
でも、本当にそうだろうか。
試合会場に来ている保護者は、チームを見に来ているのではない。
監督を見に来ているのでもない。
我が子を見に来ている。
だから、一人の選手を試合に出さなかったということは、その子のお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟…。
その家族全員の「楽しみ」を奪ったということでもある。
一度なら我慢できる。
二度目も、「次こそは」と期待する。
しかし、それが何試合も続いたらどうなるだろう。
「今日も出ないだろう。」
そう思えば、応援には来なくなる。
一人の選手が出場できなかったことで、失うのは一人ではない。
一家族分のサポーターを失う。
それが5人なら、5家族。
10人なら、10家族。
応援席は少しずつ静かになっていく。
拍手が減る。
歓声が減る。
SNSでチームのことを発信してくれる人も減る。
口コミで「いいチームだよ」と紹介してくれる人も減る。
やがて体験会に来る子どもが減る。
入団希望者が減る。
選手が集まらなくなる。
チームの活気がなくなる。
指導者は言う。
「最近は子どもが集まらない。」
でも、本当にそうだろうか。
子どもが減ったのではない。
応援してくれる人を、自分たちで減らしてしまったのではないか。
勝利は、その日の結果を変える。
しかし、応援者は、そのチームの未来を変える。
育成年代の指導者が育てるべきものは、選手だけではない。
「このチームを応援したい」と思ってくれる人たちだ。
その第一歩は、とてもシンプルである。
一人でも多くの子どもがピッチに立つこと。
ほんの数分でもいい。
その数分が、その家族にとっては一生忘れられない時間になる。
そして、その感動は、チームの未来を支えるサポーターを生み続ける。
試合に勝つことを否定しているのではない。
問いかけたいのは、ただ一つ。
あなたは今日、勝利を手に入れましたか。
それとも、
未来のサポーターを失いましたか。


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