
「どうすれば、もっと分かりやすく教えられるだろう?」
「なぜ、何度言っても子どもたちのやる気が出ないんだろう?」
学校の教室でも、スポーツの現場でも、私たち大人は日々こんな悩みを抱えます。
そして、自分の「説明の仕方」や「声かけのバリエーション」を必死に磨こうとします。
でも、ふと思うことはありませんか。
どれだけ完璧な説明をしても、ちっとも響かない日がある一方で。
少し言葉足らずでも、子どもたちが自分からどんどん前のめりになっていく日があることに。
この違いは、一体どこから生まれるのでしょうか。
結論から言うと、それは「指導のスキル」の差ではありません。
もっと根本的な、人間の「脳が学ぶ準備ができているか」という順番の違いです。
人間が心から「楽しい!」「できた!」と感じて主体的に没頭するとき、私たちの内側では、ある決まった順番で心が満たされていくと言われます。
第一の土台は、「ここにいていいんだ」という安心感や、心身の落ち着き(セロトニン)。
第二の土台は、「この仲間となら大丈夫」「先生が信じてくれている」という信頼やつながり(オキシトシン)。
そして最後にやってくるのが、「できた!」「もっとやりたい!」という達成感や意欲(ドーパミン)です。
私たちが教育や子育ての現場でついやってしまうのは、いきなり一番上の「意欲」や「達成感」だけを狙いにいくことです。
「いい点数を取ろう」
「試合に勝とう」
「早くできるようになろう」
でも、土台となる「安心」と「つながり」がない空間で、いきなり意欲だけを引き出そうとしても、人は動きません。
「間違えたら恥ずかしい」
「正解を言える子だけが評価される」
「できないと置いていかれる」
そんな環境では、どんなに素晴らしい知識を提示されても、子どもたちの主体性は固く扉を閉ざしてしまいます。
だからこそ、私は最近こんな確信を持っています。
「オキシトシン(つながり・安心)が湧くことを前提としない授業や指導は、もう成り立たない」と。
子どもが学ばないとき、動かないとき。
「やる気がない」「主体性がない」と子どものせいにするのは簡単です。
でも、本当に問うべきは、
「この空間は、その子が安心して間違い、誰かとつながりたくなる環境になっているか?」
という、私たち大人がつくっている空気感の方です。
授業が上手い人、あるいは人が育つチームをつくるリーダーは、決して「説明が上手いだけの人」ではありません。
子どもの中に、「この人と、この仲間と、この場所で学びたい」という感情を生み出せる人です。
知識を教え込む前に、学べる関係性をつくる。
学力を伸ばす前に、安心の土台を整える。
では、日常の中でどうやってその「つながりや信頼」を育めばいいのでしょうか。
特別なイベントは必要ありません。
例えば、子どもや選手が何かに行き詰まっているとき。
「手伝おうか?」「こうやってごらん」と先回りして声をかけるのを、一度グッとこらえてみてください。
代わりに、こう聞いてみるのです。
「あなたはどうしたい?」
まずは本人の意思を聞く。その上で、「じゃあ、何か手伝えることはある?」とサポートに回る。
「あなたはどうしたい?」が先。
「手伝おうか?」があと。
この、ほんの小さな順番の違いが、「あなたが主役だよ」「私はあなたを信頼して応援しているよ」という強烈なメッセージとなり、確かな安心とつながりを生み出します。
人が輝き出す環境は、そんな小さな対話の積み重ねからつくられていきます。
明日の教室で、あるいは職場で。
「この場所は今、安心とつながりで満たされているだろうか?」と、少しだけ空間の温度を感じてみませんか。
あなたは今、誰の前でなら、一番安心して失敗できそうですか?
この問いへの答えが、心地よい環境づくりのヒントになるかもしれません。
もし、この記事を読んで顔が思い浮かんだ同僚や、子育て・指導に悩む友人がいたら、ぜひ「安心の順番」について話してみてください。

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