職員室の、たったひとりに届けば

100万部売れた本は、「ミリオンセラー」と呼ばれる。

100万部と聞くと、ものすごい数だ。
多くの人に読まれ、たくさんの人の心をつかんだ本なのだと思う。

でも、日本の人口を約1億人と考えると、100万部は100人に1人ほどの割合になる。

そう考えると、どれだけ話題になった本でも、読んでいない人のほうが圧倒的に多い。

では、これを職員室に置き換えてみたらどうだろう。

50人の職員がいる学校。

その中で、自分の書いた文章を読んでくれる人がひとりいる。

たったひとり。

以前、校長先生に言われたことがある。

「一人読めばすごいことだぞ」

当時は、その言葉の意味を深く考えていなかった。

けれど、今になって思う。

50人の職員がいる中で、自分の書いた文章を、たったひとりでも読んでくれる。

それは、決して当たり前のことではないのかもしれない。

忙しい毎日の中で、ふと文章に目を留めてくれる。
読んで、何かを感じてくれる。
もしかしたら、自分と同じ思いを見つけて、少し心が軽くなる人もいるかもしれない。

書いた側には見えなくても、言葉が誰かの心に届くことはある。

発信を続けていると、どうしても反応の数が気になる。

もっと多くの人に読んでほしい。
たくさんの人に共感してほしい。

そう思うのは自然なことだ。

でも、読んでくれた人数だけで、文章の価値が決まるわけではない。

100万人に読まれることも、もちろんすごい。

けれど、50人の職員室で、たったひとりが読んでくれることだって、すごいことなのだ。

そのひとりが「読んでよかった」と思ってくれたなら。

そのひとりの心に、何かが残ったのなら。

書いた意味は、きっとそこにある。

みんなに届かなくてもいい。
誰からも反応がないように見える日があってもいい。

自分の言葉を必要としてくれる人が、どこかにひとりいるかもしれない。

そう思えたら、書くことはもう少し自由になる。

大勢に認められることだけが、成功ではない。

職員室の、たったひとりに届く。

それだって、十分すごいことなのだから。

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