指導者が熱い思いでフィロソフィーを語ることは、とても大切です。
選手がその思いに共感すれば、チームの方向性は揃います。
でも、チームを本当に変えるのは、フィロソフィーそのものではなく、それを実現する「仕組み」ではないでしょうか。
以前は、「いい話をすれば人は変わる」と思っていました。
でも、数週間すると、選手たちは少しずつ元に戻ってしまう。
その姿を見て、「言葉だけでは足りないんだ」と気付かされました。
経営の世界には、「文化は仕組みの結果である」という考え方があります。
文化は熱意だけでは生まれません。
毎日の行動が積み重なって文化となり、その行動を生み出すのが仕組みです。
「主体的に考えよう。」
「応援される選手になろう。」
そんな言葉を伝えることはできます。
でも、その言葉だけで主体性や人間性は育ちません。
主体的にならざるを得ない環境があり、仲間のために動きたくなる仕組みがあるからこそ、選手は変わっていきます。
つまり、指導者の仕事は選手を変えることではありません。
選手が変わる環境を設計すること。
そこに、指導者の価値があるのだと思います。
そして、この「仕組み」という考え方は、選手の育成だけではなく、チーム経営にも当てはまります。
ここで、一つ大切にしたい視点があります。
それは、「チームは誰によって支えられているのか」ということです。
保護者は、最初からチームを応援しに来ているわけではありません。
授業参観と同じです。
学校へ行く理由は、学校を見るためではなく、自分の子どもの姿を見るためです。
サッカーも同じではないでしょうか。
最初は、「我が子が頑張る姿を見たい」という思いでグラウンドへ足を運びます。
その姿を見て嬉しくなり、安心し、その感動が積み重なって、「このチームを応援したい」という気持ちへ変わっていく。
つまり、
「我が子を応援する」から、「チームを応援する」へ。
この順番があるのだと思います。
だから、「全員を試合に出すべきだ」と言いたいわけではありません。
勝負の世界である以上、それは現実的ではありません。
でも、選手や保護者が本当に求めているのは、出場機会の平等ではないはずです。
求めているのは、
納得できるプロセスです。
見てもらえている。
育ててもらえている。
まだチャンスがある。
そう感じられる環境です。
だから指導者が設計すべきなのは、
「出場機会の平等」ではなく、「挑戦機会の公平性」。
この視点があるだけで、チームの空気は大きく変わります。
選手が諦めるのは、実力差があるからではありません。
「もう何をしても変わらない。」
そう感じたときです。
逆に、「まだ可能性がある」と思える環境があれば、人は努力を続けます。
その空気は、保護者にも伝わります。
そして、やがてチームを応援する人を増やしていきます。
試合の勝利は、その日の結果を変えます。
でも、サポーターはチームの未来を変えます。
だからチームビルディングには、
勝利。
育成。
そして、サポーターづくり。
この三つの柱が必要なのではないでしょうか。
その三本目を支えるのが、「仕組み」です。
熱いフィロソフィーは、人の心を動かします。
でも、仕組みは、人の行動を変えます。
そして、行動が積み重なったとき、文化になります。
強いチームとは、勝つチームではありません。
勝ち続け、応援され続ける文化を持ったチームです。
だから私は、「日本一勝つチーム」よりも、
「日本一応援されるチーム」
を目指したい。
そういうチームには、人が集まり、人が育ち、文化が育ちます。
そして、その先に、本当の強さが生まれるのだと思っています。

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