フジパンカップ

一人で伝えるか、みんなで語るか

最近、改めて感じていることがあります。それは、人は誰かに言われたことよりも、自分で考えて決めたことの方が行動するということです。どれだけコーチが熱意を込めて話しても、その言葉が全員の心に同じように届くわけではありません。すぐに動き出す選手もいれば、「なるほど」と思うだけの選手もいます。聞いているようで聞いていない選手もいるでしょう。それが普通です。だからこそ、コーチが一人で話すだけでは、チーム全体に広がる力には限界があります。

もちろん、指導者の言葉には大きな価値があります。方向性を示したり、気づきを与えたりすることはとても大切です。しかし、本当に大きな力が生まれるのは、その後です。選手同士が話し始めたときです。「私はこう思う」「それ、いいね」「じゃあ次はこうしてみよう」「私はここを頑張りたい」。そんな対話が始まると、一人一人が聞き手ではなく当事者になります。コーチから与えられた目標だったものが、自分たちの目標へと変わっていくのです。

私はこれを、ろうそくの火に例えます。コーチが10本のろうそくに火をつけることも素晴らしいことです。しかし、もっと大きな力になるのは、火がついた10本のろうそくが互いに火を灯し合う状態です。一人の熱量が10人に伝わる世界と、10人全員が発信者になる世界では、生まれるエネルギーがまったく違います。数式で表せば、トップダウンは「1人×10人」です。しかし、ボトムアップは「10人×10人」になります。もちろん実際はそんな単純な計算ではありませんが、選手同士が語り始めた瞬間に、チームの成長スピードが大きく変わることは確かです。

人は仲間と対話し、自分で決めたことに責任を持ちます。仲間と一緒に決めたことには愛着も生まれます。だから続くのです。だから頑張れるのです。だから失敗しても立ち上がれるのです。仲間との対話によって生まれる安心感や信頼感は、人を前向きな行動へと導いてくれます。

先日見た女子チームもそうでした。コーチが答えを与えるのではなく、選手たちがホワイトボードを囲み、自分たちで試合を振り返り、自分たちで次の一手を考えていました。観る。気づく。考える。行動する。そのサイクルを選手たち自身が回していたのです。その姿を見ていて、あることに気づきました。

強いから自分たちで考えているのではないのです。自分たちで考えているから強くなっていくのです。

これはサッカーだけの話ではありません。学校でも、仕事でも、人生でも同じです。人は誰かに動かされるよりも、自分で考え、自分で決めたときに最も成長します。だから私は、コーチのゴールは「うまく話すこと」ではなく、「選手同士が語り始めること」だと思っています。

子どものスタートは教師のゴール。

子どもたちが自分たちで考え、自分たちで決め、自分たちで動き出す。その瞬間こそが、本当のスタートなのだと思います。

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