番号のある世界⑨

朝、目が覚めた。

いつもの天井。
いつもの部屋。

ほっと息をつく。

悪い夢。

そう思ってスマホを開く。

ロック解除。

表示された名前。

――違う。

知らない名前。

だが、

壁の写真の中で笑っているのは
私だった。

カレンダー。

誕生日。

――違う。

免許証。

――違う。

鏡を見る。

顔は、私。

なのに、

すべての情報が
「別人」。

テレビをつける。

ニュースキャスターが言う。

「本日より、新管理制度が全面適用」

聞き覚えのある言葉。

「個人識別の最終基準は番号となります」

心臓が強く打つ。

「氏名・住所等は参考情報として扱われます」

番号。

また番号。

玄関のチャイム。

スーツ姿の職員。

「確認に参りました」

差し出された端末。

「番号をお願いします」

恐る恐る告げる。

読み取られる。

一瞬の静寂。

「……問題ありません」

職員は頷く。

「あなた様は」

柔らかく微笑んだ。

「こちらの方ですね」

端末の画面。

そこに映る顔。

――私。

表示された名前。

――他人。

ドアが閉まる。

静かな部屋。

私は理解する。

もう戻れない。

私は私なのに、

私は
私ではない。

番号が違えば、

人生そのものが
書き換えられる。

ふと、

机の上に一枚のカード。

マイカード。

そこには確かに
私の顔。

だが、

名前の欄は空白だった。

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