昨日公開された映画 『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』 を観て、私は深く心を揺さぶられ、言葉にするまでに少し時間を要した。
澄み渡る海、白い砂、緑濃い森――まさに「楽園」と呼ぶにふさわしい自然。その美しい舞台で描かれるのは、極限状態に置かれた若い兵士たちの人生であり、命の尊厳であり、そして戦争の残酷さそのものだった。
この映画は、激戦地となったペリリュー島で、漫画家を志す青年 田丸均 が「功績係」として戦場を記録する姿を中心に進んでいく。
彼の役割は、目の前で倒れていった仲間たちの最期の言葉や願いを、遺族へ届けるために書き残すこと。
銃を持って戦うのではなく「描き残し、伝える」という使命を背負い、死と向き合い続ける姿は、静かだが強烈に胸に迫った。
作中、楽園のような風景が、次の瞬間には爆発と血と叫びに変わる。
光と陰、静と動、美しさと残酷さの対比は、観る者に問いを突きつける。
「戦争とは何なのか」
「誰が、何のために死んでいったのか」
「その記憶を、私たちはどう受け止め、どう未来へつなぐのか」
映画を観ながら、私はふと ピカソの『ゲルニカ』 という絵画を思い出した。
爆撃で失われた命の叫びを、モノクロのキャンバスに刻みつけたあの絵と同じように、
この作品も「語られることのなかった人々の声」を、私たちの前に強烈に突きつけてくる。
歴史の教科書では、数字と年号の羅列として扱われる「戦争」。
しかし、その向こうには、それぞれの名前があり、家族があり、叶えられなかった夢があり、生きたいという強い願いがあった。
映画は、その一人ひとりの物語を想像せずにはいられないほどのリアリティで描いている。
観終えたあと、私は静かに考え込んだ。
過去の悲劇をただ悲しむだけでは不十分だということを。
知ること、想像すること、語り継ぐこと。
それこそが、私たちが未来に対して果たせる唯一の責任なのではないか。
この映画は、戦争映画ではなく、
「生きる意味を問う映画」
であり、
「人間の尊厳を描く映画」
だと私は感じた。
忘れずに伝えていかなければならない――その思いだけが、今も強く胸に残っている。

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