⭐︎指導の現場で起きていた、まさかの「動きのすれ違い」
指導者の皆さん、あなたは選手に「当たり前のこと」を伝えているつもりでいませんか?そして、「何度言っても直らないな…」と諦めかけていることはありませんか?
先日、私たちコーチ陣は、ある選手の行動から大きな気づきを得ました。それは、私たちが使っている「チェックの動き」という一つの言葉が、指導者と選手の間で全く違う意味で解釈されていたという事実です。
コーチが求める「チェックの動き」(V字・L字の動き)
私たちが指示した「チェックの動き」とは、主にボールを受けるときや、マークを外すときに使う、技術的な動作です。
• 期待する動作: 相手を引きつけるために一旦近づき、素早く方向を変えるV字やL字のカットイン動作。これによってディフェンスの裏をかき、スペースを作り出します。
• 指導者の意図: 「7番、チェックの動きをしろ!」=「今、V字に動いて、受けやすい位置を作れ」
選手が解釈していた「チェック」(首振り確認)
しかし、選手は私たちの指示を聞いたとき、全く別の行動をしていました。
• 実際の行動: 首を振り、周囲のディフェンスや味方の位置を確認する(セルフチェック)。
• 選手の解釈: 「チェックしろ」=「周りをよく見て状況を確認しろ」
私たちは、「なぜこの子はいつまでも周りをキョロキョロ見ているだけで、動きとして変わらないんだ?」と思っていました。何度言っても、V字やL字の動作は入らない。
違ったのです。彼は指示通りに「チェック」をしていた。ただし、頭を使って周囲を確認する「チェック」を。私たちが求める体を使った「チェック」ではなかった、それだけだったのです。
⭐︎言葉の壁を崩す3ステップ
この「言葉の認識のズレ」は、指導者が陥りがちな最大の落とし穴です。選手が「やらない」のではなく、「言葉の定義が違うから、違うことをやっている」だけだったのです。
このズレを解消し、選手を確実に成長させるためには、このエピソードで再確認した指導の原則が必要です。
1.言葉の定義の「見える化」:
「チェック」という言葉を聞いたとき、「あなたは何をイメージする?」と選手に問いかけ、言葉の定義を確認する。指導者のイメージするV字・L字の動きを、図やジェスチャーで明確に見せます。
2.動きと言葉の完全一致:
動きができたときには、「ナイス!今のV字の動きが『チェックの動き』だぞ」と、動きと専門用語をセットでフィードバックして、言葉の理解を定着させます。
3.最終段階:実践と承認
山本五十六の言葉にあるように、「言って聞かせ(定義の確認)、やって見せ(コーチのデモ)、やらせてみて(実践)、褒める(フィードバック)」というサイクルを徹底する。
指導の質は、私たちが当たり前と思っている一つの言葉に隠されています。今日から、言葉の定義を選手と共有する時間を作ってみませんか?
この経験から、私たち指導者にとって最も大切なのは、選手が言葉をどう捉えているか、その視点に立つことだと痛感しました。皆さんは指導の現場で、似たような「言葉のズレ」を感じたことはありますか?

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