「とうもろこしのひげ茶」から考える、小さな道徳の授業案
— 捨てていたものに、価値を見つける30分 —
■ 授業のねらい
身のまわりにある「当たり前に捨てているもの」の中に価値を見つける力を育む道徳授業です。これは愛知教育大学、鈴木健二教授の実践の構想追試です。
とうもろこしの「ひげ」が、実はお茶として活用されているという事実に触れ、見過ごされがちな存在にも意味があることに気づかせます。
その驚きと気づきから、「小さな存在の価値」を子どもたち自身に見つけさせ、他者理解や自己肯定感へとつなげていきます。
■ 授業の流れ
1. 導入:写真提示と軽いジョーク
教師が広告写真を提示。(例:かっこいい俳優と「とうもろこしのひげ茶」のポスター。ただし“ひげ”の文字は隠す)
教師:「この俳優、かっこいいよね? このお茶を飲んだら、こんな顔になれるかな(笑)」
自然な笑いと共に、子どもたちの心を開きます。
2. 発問:材料は何?
教師:「ところで、このお茶って、何でできてると思う?」
正解はすぐに言わず、想像を促します。
3. 展開:実物で五感を刺激
とうもろこしの実物を提示。
皮をむきながら話す:
教師:「とうもろこしって、こうやって食べるよね。でも、いらないところは捨てちゃおうか…」
(と言って、なんと実の部分を“ごみ箱”にポイッと投げる仕草)
子どもたち:「えっ!? 実を捨てちゃうの!?」というざわめきが生まれる瞬間です。
教師:「じゃあ、いったい何が使われたと思う?」
4. 心を揺さぶる種明かし
教師:(笑顔でラベルを見せながら)「そう、これなんだよ。とうもろこしの“ひげ”!」
→「えー!」というリアクションが自然と出るように構成されています。
5. ペア交流:自分の生活に引き寄せて
教師:「普段、当たり前に捨てちゃってるけど、実は役立つものってあるかな?」
→ 1〜2分、隣の人と一言ずつ話す。
6. 全体共有:再発見の時間
- 使い終わった鉛筆のお尻がドライバーになる
- 古着を雑巾にする
- 見た目は悪いけど味は美味しい野菜
子どもたち自身が「価値の再発見」を言語化する場面です。
7. 教師まとめ:価値語の発信
教師:「普段は“いらない”って思うようなものが、実は大事な働きをしてるってこと、あるよね」
教師:「人だって同じ。“目立たないところ”が、実は一番支えてるってこと、あるかもしれないよ」
この言葉で、“モノ”の話を“人”へと結びつけ、道徳の深みを生み出します。
■ この授業のポイント
- 物語性とユーモアを活用して、子どもの心を自然に開く。
- 視覚的な驚き(実を捨てる動作 → ひげの種明かし)で強烈な印象を残す。
- 「捨てていたものに価値がある」という構造が、自己肯定感の育成にもつながる。
- 最後は「人」に焦点を当てて、他者理解と共感を広げる。
■ おわりに
鈴木健二教授が提唱する「小さな道徳」は、目立たないものに宿る意味や価値を見つける力を育てる実践です。
とうもろこしの「ひげ」一つとっても、そこに思いを巡らせることで、子どもたちの心にあたたかな芽が育ち始めるのではないでしょうか。
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