「音」に表れる心 ― 給食の食器を通して子どもに伝えたいこと

モノを大切にする心は「音」に表れる

学校の給食の後片付けで、食器が投げ入れられ、ガチャガチャと音を立てている場面を見かけることがあります。

その音は、物を大切にしていない心の表れです。逆に、静かに食器を扱う姿には「大切にしたい」という気持ちがにじみ出ます。

子どもたちに「音を立てないで」と指示するだけでは意味が薄くなりがちです。大切なのは、「なぜ音を立てないのか」を伝えることです。

「モノを大切にする心は音に出る」――そう話してスタートすることが、子どもの納得につながります。

音を整えると、しぐさが美しくなる

教育書や礼法に関する本でも「音」に注目する大切さが説かれています。

石川真理子先生は、武家の家庭教育において「音を聴きなさい」と繰り返し教えられた経験を紹介しています。歩く音、食器の音、襖やドアの音、物の置き方まで、あらゆる場面で音に配慮することを学んだそうです。

この実践を通じてわかるのは、音を立てないように意識することで、自然に動作や指先が丁寧になり、結果として「美しい立ち居振る舞い」へとつながるということです。

子どもたちに一つひとつ作法の形を覚えさせるのは難しくても、「音に気を付ける」ことならすぐに実践できます。音を整えることは、生活全般に通じる心の教育なのです。

次のステップは「美しく返す」

食器指導には段階があります。まずは「音を立てない」。これができるようになったら、次は「美しく返す」です。

返すときの姿を見ているのは先生や調理員さんだけではありません。同じクラスの仲間も見ています。丁寧に返す姿は周囲に安心感を与え、クラス全体の空気を温かくします。

ちょっとした心がけで、教室の雰囲気ががらりと変わるのです。

音は人の心に響く

人の気持ちは、想像以上に「音」に左右されます。大きな騒音が人を苛立たせる一方で、静かな音や丁寧なしぐさは人に安心感を与えます。

食器の片付けは毎日繰り返される行為です。その中で「音は人を傷つけもすれば、和ませもする」という感覚を身につけられるのは、子どもにとって大きな学びとなります。

教師が率先垂範する

こうした指導で欠かせないのが、教師自身の姿です。

「静かにしなさい」と口で言うだけではなく、教師自身が音を立てずに食器を返す姿を見せる。これこそが率先垂範です。

子どもは大人の行動から学びます。教師が丁寧に食器を扱えば、それが最大の説得力を持つ指導となります。

学級目標とつなげて

多くのクラスには「仲間を大切に」「思いやりをもつ」といった学級目標があります。もし食器を乱暴に扱っていたら、その目標と矛盾してしまいます。

矛盾を見抜くのは子どもです。だからこそ、日常の小さな行為においても、一貫性を大切にする必要があります。

食器を丁寧に返すという小さな積み重ねが、仲間への思いやりや物を大切にする価値観を形づくっていくのです。

おわりに

給食の片付けで「音を立てない」ことは、単なるマナーではありません。

  • モノを大切にする心
  • 周囲への配慮
  • 作ってくれる人への感謝
  • 美しい立ち居振る舞い

これらを育むための教育的な営みです。

教師が率先垂範し、全職員が同じ方向で指導することで、子どもたちに「音は心を映す鏡」であることを伝えていきたいものです。

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