「今の意見、どうですか?」 ――問いを大切にする教室に、もやもやは必要だ

1.意見が出た“そのあと”に、授業の正体が出る

子どもが意見を言った。

その瞬間、授業は分かれ道に立ちます。
• 「そうだね」と次へ進むか
• もう一度、問いを立て直すか

問いを大切にする授業は、
意見が出たあとから始まる。

2.評価しない、まずは「へー、なるほどね」

問いを生かす最初の条件は、
評価をしないことです。

へー、なるほどね

この一言は、
• 正しいとも
• 間違っているとも
• すごいとも

言っていません。

ただ、

あなたの考えは、ここに置いていい

と伝えているだけです。

このニュートラルな受け止めがないと、
次の問いは成立しません。

3.そこで初めて聞ける

「今の意見、どうですか?」

評価されないと分かった瞬間、
子どもは安心して考え始めます。
• 同じと思った人
• 違うと感じた人
• まだ言葉にならない人

全員が、
学びの輪の中に入る。

「今の意見、どうですか?」は、
答えを求める問いではありません。

ちゃんと聞いていた“あなた”は、
どう受け取った?

という、参加への招待です。

4.それでも言葉にならないときがある

でも、こういう瞬間も起きます。
• 同じか違うか分からない
• 引っかかっている気はする
• でも、何が引っかかっているか言えない

ここで教師が焦ってまとめると、
学びは終わってしまいます。

5.そこで登場する、もう一つの問い

「もやもやしているところ、ある?」

これは、
「今の意見、どうですか?」の次の段階です。

大事なのは、
いきなり聞かないこと。
• へー、なるほどね
• 今の意見、どうですか?

この積み重ねがあって、
初めて機能する問いです。

6.「もやもや」は、分からなさの肯定

この問いが伝えているメッセージは、明確です。

分からなくていい

スッキリしていなくていい

途中でも、立派な学びだ

「もやもや」は、
• 思考が止まっている状態ではない
• 考え始めているサイン

だから、

どこがもやっとした?
さっきの言葉?考え方?

と具体に下ろせば、
思考はもう一歩進みます。

7.この流れで育つ力

この問いの連続が育てているのは、
• 聞き続ける力
• 分からなさを抱えられる力
• 人の意見で自分を更新する力
• 安心して考え続ける力

テストでは測れないけれど、
学びの土台になる力です。

8.問いを大切にしない授業が教えてしまうこと

問いが途中で打ち切られると、
子どもはこう学びます。

分からないままでもいい

誰かが答えを言うまで待てばいい

自分の考えは必要ない

これは、
「一人も取り残さない」と言いながら、
実は取り残しているヒドゥンカリキュラムです。

9.問いを大切にするとは

問いを増やすことではありません。
• 評価しない
• 立ち止まる
• 考え続ける時間を守る

その覚悟を持つことです。

10.結びに

へー、なるほどね

今の意見、どうですか?

もやもやしているところ、ある?

この三つの問いがそろったとき、
教室は
• 安心で
• 安全で
• 安定した

学び合う空間になります。

問いを大切にする授業とは、
子どもの思考を途中で終わらせない授業。

だから私は、
今日もこの問いを手放しません。

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