授業中、子どもが意見を言ったとき。
私たちはつい、こう返したくなります。
「いい意見だね」
「それは違うかな」
どちらも、善意です。
でもその瞬間、学びの主導権は、教師の手に戻ってしまいます。
⭐︎奪わない問いは、学びを奪う準備になる
サッカーで、前線の守備がすぐにボールを奪いに行かず、
コースを切って相手を誘導する場面があります。
その目的は、
自分が奪うことではなく、後ろが奪える状況をつくること。
授業の
「今の意見、どうですか?」
という問いは、これととてもよく似ています。
教師がその場で評価せず、
方向だけを示すことで、
次の発言が生まれる余白を残す。
これは、
学びを止めないための問いです。
⭐︎その場では、何も起きていないように見える
この問いを投げた直後、
・すぐに手が挙がらない
・少し沈黙が流れる
・進んでいないように感じる
そんなこともあります。
でも実際には、
子どもたちはこう考え始めています。
「自分はどう思う?」
「さっきの意見、どう受け止めたらいい?」
この“見えない時間”こそが、
後で効いてくる布石です。
⭐︎見えない貢献は、評価されにくい
「今の意見、どうですか?」は、
授業を派手に動かす問いではありません。
だからこそ、
・まとめていないように見える
・指導していないように見える
と誤解されることもあります。
しかし実際には、
子ども同士の思考が動き出す条件を整えています。
⭐︎成果を急がない問いが、成果を生む
ゴールが突然生まれるように見えるのと同じで、
理解も、急に起きたように見えます。
でもその前には必ず、
・評価しない問い
・待つ時間
・考えを委ねる姿勢
があります。
「今の意見、どうですか?」は、
答えを出すための問いではありません。
学びが生まれる状態をつくるための問いです。
おわりに
教師がすぐに答えを持たない時間。
そこに、学びは芽を出します。
もし授業で迷ったら、
評価の代わりに、こう問いかけてみてください。
「今の意見、どうですか?」
その一言は、
その場では目立たなくても、
確実に学びを前に進めています。

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