薬物は、ポケットに入れていたり使用したりしただけで逮捕される。それは、社会がそれを「違法薬物」と定めているからだ。
では、もし“まだ違法とされていないだけで”、それ以上に危険なものがあるとしたらどうだろうか。
たとえば、麻薬が世に広まる前、それは医療用の薬として普通に使われていた時代があった。つまり、危険性が明らかになるまで、人々はそれを「便利なもの」「助けになるもの」と信じていたのだ。
その視点で現代を見つめると、私たちのポケットにいつも入っている「スマホ」も、似た構造をもっているのではないかと思う。
スマホは便利だ。世界中とつながり、情報もすぐに手に入る。けれど、その便利さの裏で、私たちの脳は確実に支配されつつある。通知音ひとつでドーパミンが出る。SNSの「いいね」に一喜一憂し、寝る間を惜しんで画面を見つめる。授業中も、食事中も、友人と話しているときでさえ、無意識にポケットの中のそれを気にしてしまう。
この状態は、依存と呼ばずして何と呼べばいいのだろう。
もし、スマホが今後「脳の報酬系を破壊する装置」だと科学的に証明されたら?
もし、「学習力や集中力を奪い、他者との関係を希薄にする現代の麻薬」だと判明したら?
きっとそのとき、私たちは「どうして誰も止めなかったんだろう」と振り返るに違いない。
もちろん、スマホ自体が悪いわけではない。使い方次第で、それは薬にも毒にもなる。
ただ一つ言えるのは、「便利」という理由だけで依存を正当化することは、麻薬を「気分がよくなるから」と言って使うのと、本質的に変わらないということだ。
私たちは、今まさに“まだ違法ではない薬物”を日常的に手にしているのかもしれない。
その自覚をもって、自分の使い方を見直すこと。
それが、未来の自分を守る唯一の“解毒”なのだと思う。

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