分からないから教えて

「分からないから教えて」といえる授業を目指したい

◆この記事を読んでほしい人

  • 授業改善に行き詰まりを感じている先生
  • 生徒同士の学び合いをもっと深めたい先生
  • 教室環境を変えることに興味のある学校管理職

◆この記事を読んで得られること

  • 机の配置が授業に与える影響の具体例
  • グループ学習における対話のあり方
  • 「分からない」が言える空気をつくる方法

授業を見直すきっかけとなった出来事

S藤(ベテラン主任):
当時、本校は生徒指導上の課題が長期にわたり改善できず、授業に集中できない状況が続いていました。部活動を活性化させることで、学校全体の雰囲気がよくなり、授業改善につながるのではないかと考えた時期もありました。しかし、1日に6時間ある授業に意欲的に取り組むためには、やはり「授業そのもの」に正面から向き合わなければならないという結論に至ったのです。

S藤:
そこで、生徒全員の学びを保障する体制、すなわち「誰ひとり取り残さない」学習環境をつくることが根本的な課題だと認識し、教室環境の見直しを決断しました。

「コの字型」の机配置とは?

K林(若手教務主任):
「コの字型」の机配置は、その名の通り、机をカタカナの「コ」の形に配置するものです。この形にすると、自然と生徒同士が互いに顔を見ながら話すことができ、教室全体が落ち着いた雰囲気になります。生徒同士が意見を交わしやすくなり、「学び合い」が促進されます。

K林:
また、先生の発言が生徒全体に届きやすくなり、教師→生徒の一方向の流れだけでなく、生徒→生徒、さらには生徒→全体への発信も自然に生まれるんです。

S藤:
従来の縦一列の机配置だと、後ろの生徒が発表するときに皆が後ろを振り向く必要があり、集中が途切れたり、聞き逃されたりすることが多くありました。その点、「コの字型」は、誰が話していても自然と全員に届くんです。

4人グループ学習のねらい

K林:
4人グループ学習では、「分かる生徒が教える」のではなく、「分からない生徒が聞く」というルールを重視しています。「ねぇ、ここどうするの?」「分からないから教えて」といった声が自然と飛び交うことが理想です。

S藤:
その通りです。毎時間このスタイルを取り入れていますが、1グループに1つの答えを出させることは求めません。あくまで、「話しながら自分の考えを深めていく」ことが目的です。

K林:
なるほど…。つまり、対話を通して生徒自身の考えが磨かれる、ということですね。

S藤:
そうです。学びの主語はあくまで生徒自身。教師主導ではなく、生徒が中心になって動く教室を目指しています。

「分からないから教えて」と言える教室

S藤:
この取り組みを始めて象徴的だったのは、それまで授業に参加しづらかった生徒が、グループの中で「分からないから教えてよ」と自然に言えた瞬間です。生徒は本当は「分かりたい」んです。その気持ちを表現できる空気をつくるのが、私たち教師の役割だと思います。

K林:
それは…本当に大きな変化ですね。

S藤:
ええ。「わからない」を隠さなくていい、「助けて」と言える。そんな空気がある教室こそが、すべての学びのスタートになるんです。

他校でも取り組める授業スタイルとして

S藤:
異動してきた教員たちは、最初はこの机配置に戸惑いを見せます。一般的には縦6列の配置が多く、そこに自分なりの工夫もしてきているでしょうから。しかし、本校のスタイルには、教科を超えた「学びの本質」があります。生徒はすぐに順応しますし、教師も校内研究などを通じて「なぜこの配置なのか」を理解すれば、実践に移せるようになります。

K林:
実際、私も最初は「本当にこれでうまくいくのかな?」と不安でした。でもやってみると、すぐにその効果を実感しました。

S藤:
そうそう。人は、体験したことがないものには、なかなか踏み出せません。だからこそ、まずは「やってみよう」という一歩が大事です。百聞は一見にしかず、ですね。

◆今号のポイント

  • 机の配置を「コの字型」にすることで、生徒同士のつながりと集中が生まれる
  • 4人グループ学習では「分からないから教えて」が自然に言える関係づくりが重要
  • 「やってみよう」という一歩が、学びの場づくりを変える第一歩になる

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