主任と初任者の対話から学ぶ「授業開き」の本質

〜「気づく力」を育てる教室づくりと、“たった一つのお願い”の意味〜

教室の空気は「授業開き」で決まる

新年度最初の授業、「授業開き」は単なる導入ではありません。今回は、あるベテラン教員(教務主任)と新卒初任者の対話を通して、気づく力を育てる授業開きの工夫について掘り下げます。
「気づけよ」と繰り返しても子どもは育ちません。それに気づいた初任者が「これならできそう」と思えるような、実践的なヒントが詰まっています。

授業開きは“関係をつくる”時間

自己紹介に見えて、実は“構え”を育てていた

初任者:
先日の6年生の図工の授業開き、見学させていただきました。自己紹介から始まったのに、後半には子どもたちの姿勢がピシッと…。ただの導入じゃなかったんですね。

主任:
そう、あれは“場づくり”の授業。子どもたちが、どんな空気で学び合うか、その「構え」をつくるのが授業開きなんだよ。

自己紹介=「聴く力」を育てる教材に

聴き方のトレーニングはここから始まる

主任:
最初に出した「教師の物語」のスライド、覚えてる? ただの経歴紹介じゃなくて、ロイロノートで「先生が大事にしたいこと」を聴きながらメモさせてたよね。

初任者:
はい。確かに、ただ聞くだけじゃなく、集中して聴く構えを育てるような流れでした。

主任:
「隣と確認してみようか」って投げかけたのも、“話し合いの型”を自然に伝えるためなんだ。いきなり「はい、話して」は難しい子もいるからね。

“たった一つのお願い”で教室が変わる

「気づく力」を育てる仕掛けとは

初任者:
あの「たった一つのお願い」、すごく印象に残っています。「友達の表情をよく見て、聴いてね」って、すごくシンプルなのに、空気が変わりました。

主任:
「気づけよ!」って何度言っても、気づける子は育たない。気づく力は、自然なやりとりの積み重ねでしか育たないからね。

初任者:
なるほど…だからこそ、授業開きのタイミングで、優しく・あたたかい空気の中でその種をまくんですね。

「ありがとう」が子どもの行動を広げていく

注意よりもモデルをつくる

初任者:
主任が「ありがとう」と声をかけた場面、素敵でした。注意じゃなくて、自然と子どもが反応していましたね。

主任:
注意は空気を硬くする。でも「ありがとう」は、気づいた行動を他の子にも広げる力がある。ポジティブなフィードバックが気づきを循環させるんだ。

どの教科でも「気づく力」は活きる

図工だけじゃない!すべての授業に通じる観点

初任者:
でもこれって、図工だからできるんじゃ…?

主任:
逆。国語の音読、算数の説明、社会の発表でも「伝える場面」はある。そこに“たった一つのお願い”を通すと、学びの質が変わるよ。

初任者:
小さな仕掛けで大きな変化を起こせるんですね…。

教師が“気づける”から、子どもも育つ

完璧より、「気づける自分」でいること

初任者:
主任、最後に「取り残した」と言っていましたが、それでも…?

主任:
「取り残した」と気づけたことが大事。それは「一人ひとりを見ようとしていた」証拠だよ。教師も成長の途中。完璧じゃなくて、“気づける教師”でいることが一番大切。

最後に:小さな一歩が、教室を育てる

初任者:
私も、次の授業で“たった一つのお願い”を伝えてみます。「ちょっと表情を見てみようか」くらいなら、すぐできそうです。

主任:
それで十分。「これくらいならできるかも」と思えたなら、それが一番大きな一歩。日常の中の小さな工夫が、教室を変えるカギになるんだよ。

【まとめ】授業開きと「気づきの力」を育てる教室づくり
• 授業開きは、学ぶ構えと空気を育てる“土台”の時間
• 自己紹介は、聴く力・対話の型を学ぶ教材になる
• 「たった一つのお願い」は、気づき・想像力・共感を生むスイッチ
• 「気づけよ」と言うだけでは育たない。小さな気づきを重ねていく
• 他教科でも活かせる、誰でもできる授業開きの工夫
• 教師自身が「気づける人」であることが、子どもを育てる力になる

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