最近、教育界で「単元内自由進度学習」が推進されつつあります。
しかし私は、この流れに対して強い危機感を抱いています。
理由は単純な好き嫌いではありません。
子どもの発達・脳科学・教育工学の観点から見たとき、重大なリスクを含んでいるからです。
■ なぜ「単元内自由進度学習」が持ち上げられているのか
この学習法が重視され始めた背景には、
• 特定の小学校での成功例
• それを理論化した大学教授
• その教授が中央のポストに就いた
という「権威性」「政治性」によって旗印が掲げられた側面があります。
つまり、
科学的妥当性ではなく
権威性によって教育界に広まっている危うさ
が存在します。
■ 脳科学・発達の観点から見た危険性
単元内自由進度学習は、
子どもが「できた!進んだ!」という感覚を得やすいため、
• ドーパミン(達成・快楽・進捗の刺激)
を生みやすい構造になっています。
しかしその一方で、
• オキシトシン(承認・つながり・共感・対話)
が軽視されやすい。
学習において最も健全なのは、
ドーパミン × オキシトシンの循環
「できた」の喜び + 「つながれた」の喜び
です。
ところが自由進度学習は
個人作業が続く → 孤立化
成果物で評価される → 承認の欠乏
対話・協働・相互作用の消失
という構造になりやすい。
これは、長期的に見て非常に危険です。
■ 教師への負担の拡大と持続可能性の欠如
単元内自由進度学習では、
• 膨大な教材準備
• 個別フィードバック
• 多段階ワークシートの整備
• 子どもそれぞれの進度管理
などが必要になります。
表向きは「子ども主体」と言いながら、
実際には教師の教材労働に依存する仕組みです。
しかも、各校・各教師が独自のワークシートを自作する形が多く、
• 効果検証の後ろ盾がない
• 教材の普遍性・再現性がない
• “授業者の自己満足”に終わりやすい
という構造的問題を抱えています。
このまま広がれば、
教師の疲弊と、子どもの孤立学習が同時に進む可能性が高いと感じています。
■ 結論
私は、単元内自由進度学習そのものを全否定しているのではありません。
しかし 「理念」や「政治性」ではなく、「脳科学・発達・学習の本質」ベースで議論されるべきだと強く感じています。
学びは本来、
個人の追究 × 仲間とのつながり
進捗の喜び × 承認の喜び
の両方が満たされることで最大化されます。
「成果物・自己完結・個別進度」が偏重される今の広がり方は、
子どもの未来のためにも見直す必要があると思っています。

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