トレセンの現場に立っていると、
どうしても選手をボードの上で“配置”したくなる。
短い時間で形を作らなきゃ、
バラバラな選手をまとめなきゃ、
そう思うのは当然のことだ。
でも最近、思うようになった。
トレセンは、仕上げる場じゃない。
寄せ集めのチームだからこそ、
そこにいる選手たちはみんな、
「上のレベルでやりたい」「自分を試したい」という
強いモチベーションを持っている。
だから、指導者が完成形を示すよりも、
その意欲に“エッセンスを垂らす”くらいでいい。
たとえば、
「どう動いたら崩れる?」「どう立て直す?」
そんな問いを一滴落とすだけで、
選手は自分で考え始める。
僕らの役目は、駒を動かすことじゃない。
駒が動き出す盤面を整えること。
指導者が動かすより、
選手自身が動き出した瞬間に、
チームは一気に“生き物”になる。
トレセンは結果を出す場所じゃない。
小さな気づきという“エッセンス”を垂らす場。
その一滴が、選手を、そしてチームを変えていく。
駒を動かす快感よりも、駒が動き出す感動を。
トレセンという特別な舞台で、その瞬間を見届けたい。

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