授業の中で「グループ学習」を取り入れることは、今や当たり前になっています。けれども、その効果を本当に発揮できているかどうかは、グループの「人数設定」に大きく左右されます。
研究者が示す視点
教育学者の佐藤学さん(東京大学名誉教授)は、「協同の学び」を支える条件として、子ども一人ひとりが役割を担い、相互に意見を交わしやすい編成が必要だと説いています。また、土屋武志さん(愛知教育大学)も、学び合いの成立には「解釈の多様性」と「発言機会の保障」が欠かせず、人数や構成が学習の質を大きく左右すると指摘しています。
この二人の研究者が共通して強調するのは、「大きすぎず、小さすぎない」単位をいかにつくるかという視点です。
3人では不足、5人以上では過多
3人グループでは、一見まとまりやすいように見えても、二人が中心になり、残りの一人が受け身に回る場面が少なくありません。議論の多様性も限られ、意見が広がらない傾向が見られます。
逆に5人以上になると、今度は人数が多すぎて、一人ひとりの発言機会が大きく減ってしまう。議論の収束も難しくなり、結果として一部の子どもだけが主導する場面が目立つようになります。
こうした理由から、佐藤さんや土屋さんも示すように、「4人」という単位が最も学びやすいと考えられるのです。
4人グループの強み
• 発言機会が均等に近い:一人あたりの発言量が確保されやすい。
• 議論が広がりやすい:2対2の意見対立が自然に生まれ、思考が深まる。
• 安心感と適度な緊張感:誰もが「自分も発言しなければ」と感じる。
• 役割が循環する:話し手・聞き手・記録者などが固定されにくい。
まさに「小さな学級の中の学級」としての単位が成立するのです。
男女比をどう考えるか
土屋さんは特に「異なる視点の混在」を重視します。そのため、可能な範囲で男女を混ぜることは有効です。4人なら「2:2」が理想で、議論の多様性が生まれやすくなります。もちろん学級の人数構成によっては完全なバランスは難しいこともありますが、偏りを避ける意識を持つだけで、学び合いの幅は広がります。
明日からできる実践
大切なのは「まず4人を基本にする」という意識です。座席の配置を工夫し、子どもたちに「どうして4人がいいのか」を一緒に考えさせるだけでも効果は大きいでしょう。授業後の振り返りで、子ども自身に「人数による話しやすさの違い」を気づかせるのも効果的です。
おわりに
佐藤学さんや土屋武志さんが示す知見は、単なる理論ではなく、日々の授業にすぐ生かせる具体的な指針です。グループ学習の最適人数は「4人」。この小さな工夫が、子どもたちの学びを深め、教室の対話を豊かにします。
明日の授業からでも取り入れてみませんか。
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