「ありのままの自分は最高!」
ある本で見つけたこの言葉に、私は胸を打たれました。
短い一言ですが、とても力強く、読む人の心を温めてくれます。
欠点や短所があってもいい。人と比べなくてもいい。そんな自分を丸ごと認めることができたとき、人は本当の意味で前に進むことができます。
この「自尊感情(セルフエスティーム)」は、私たち大人にとっても、子どもたちにとっても欠かせないものです。
今回は、養護教諭・ベテラン教員・若手教員の三人で、「教職員自身の自尊感情をどう育て、子どもにどう伝えていくか」を語り合いました。
1. 教職員自身の自尊感情をどう育むか
田中(ベテラン)
「『ありのままの自分は最高!』という言葉は、まず私たち教師自身が実感できなければ子どもに伝わらないと思います。
長く教師をしてきて思うのは、子どもは先生の言葉だけでなく、態度や雰囲気から多くを感じ取るということです。
先生が自分を卑下してばかりいたら、子どもたちは『自分を大切にしていいんだ』とは思えないでしょう。」
鈴木(若手)
「私自身、授業で失敗するとすぐに落ち込んでしまうんです。
『子どもたちに迷惑をかけた』と責めてしまって。
表向きは『失敗はチャンスだよ』なんて言いながら、自分には甘くなれない。自尊感情が低いままでは、子どもに説得力あるメッセージは届けられないなと感じます。」
佐藤(養護)
「自尊感情は、“自分はここにいていい”という根っこの部分の感覚です。
成果や評価の前に、『自分は大丈夫』と思えるかどうか。教師が自分を肯定できていると、子どもにも安心感が広がります。
だからこそ先生方自身が、自分を労わり、認める習慣を持つことがとても大切です。」
2. 子どもに「ありのままの自分」をどう伝えるか
鈴木(若手)
「とはいえ、子どもにどう伝えるかは難しいですね。
特にテストや運動会のように競争がある場面では、『結果を出さなきゃ』と子どもたちも焦ってしまう。
そんな中で『ありのままでいいよ』と伝えても、現実感が薄いんじゃないかと思うこともあります。」
田中(ベテラン)
「そこは工夫が要りますね。
私も若い頃は『もっと努力しなさい』ばかり言っていました。
でも今は、まずその子の存在そのものを受けとめるようにしています。
『今日も学校に来てくれてうれしい』とか『君の考え方、ユニークだね』とか。
欠点や結果ではなく、ありのままを認める言葉が、子どもたちに安心を与えるんです。」
佐藤(養護)
「子どもたちは、失敗や欠点を受けとめてもらった経験を通して初めて『自分のままでいいんだ』と思えるようになります。
だから先生が『ここも素敵だよ』と強みを言葉にしてあげることは、とても大きな意味があります。
小さな承認の積み重ねが、子どもたちの心を支えるんです。」
3. 教職員同士で育み合うセルフエスティーム
鈴木(若手)
「自分のセルフエスティームを育てるには、子どもとの関わりだけじゃなく、先生同士の関係も大事だと感じます。
授業後に先輩から『ここが良かったよ』と一言もらえるだけで、救われることがあります。
逆に『ここがダメだった』だけを指摘されると、自分を否定されたように感じてしまって……。」
田中(ベテラン)
「確かに、指導のつもりで若手を追い込んでしまうことがありますね。私も気をつけたいと思います。
お互いを認め合う関係づくりは、若手のためだけでなく、自分自身にとってもプラスになります。
互いに『ありがとう』『助かったよ』と伝え合う職員室の雰囲気が、子どもにも良い影響を与えます。」
佐藤(養護)
「大人同士の関係性は、子どもたちに映し出されています。
先生同士が尊重し合っている姿は、そのまま子どもへのお手本になります。
学校全体で『大人も自分を認め、相手を認め合う』文化をつくることが、子どもの自尊感情を育てる土壌になるんです。」
4. 授業や日常でできる工夫
鈴木(若手)
「最近、道徳の授業で“自分のよさを友達に伝える”という活動をしました。
最初は照れくさそうでしたが、友達から『字がきれい』『元気に挨拶してくれる』といった言葉をもらった子は本当にうれしそうで。
小さなことでも、『ありのままの自分を認めてもらえた』という体験になるんだと実感しました。」
田中(ベテラン)
「とてもいい取り組みですね。算数の授業でも、答えが間違っていても『考え方は筋が通っていたよ』と伝えるようにしています。
体育が苦手な子にも『最後まで走り切ったね』と声をかける。
結果よりも努力や姿勢を評価することで、子どもは“存在そのもの”を肯定される感覚を得ます。」
佐藤(養護)
「先生の一言は、子どもの心に長く残ります。
『頑張ったね』『ありがとう』といったポジティブな言葉が支えになる一方で、『なんでできないの』という否定は大きな傷になる。
だからこそ意識して、ありのままの自分を認めてもらえたと感じられる声かけを積み重ねていきたいですね。」
5. 大人も子どもも、ともに育つ
鈴木(若手)
「今日のお話で、自分のセルフエスティームを育てることと、子どもの自尊感情を育てることは表裏一体なんだと感じました。
先生自身が“自分を認める練習”をしながら、子どもと一緒に成長していけばいいんですね。」
田中(ベテラン)
「まさにそうです。『ありのままの自分は最高!』という言葉は、子どもだけでなく大人にとっても必要なメッセージ。
教師も親も、自分を否定しがちなときに思い出したい言葉です。
年齢や経験に関係なく、セルフエスティームは育ち続けるものだと思います。」
佐藤(養護)
「最終的に目指したいのは、“学校全体が安心して自分らしくいられる場”になることです。
大人も子どもも共に『自分は大丈夫』と思える空気をつくること。
そのために私たち教職員がまず、自分の心を大切にし、ありのままを受け入れる姿を見せていきたいですね。」
おわりに
今回の鼎談から見えてきたのは――
– 教職員自身がセルフエスティームを育てることが、子どもの自尊感情につながる。
– 「ありのままの自分は最高!」というメッセージは、大人にも子どもにも必要。
– 学校全体で互いを認め合う文化をつくることが、子どもに安心感を与える土台になる。
「ありのままの自分は最高!」
その言葉を、私たち大人自身が胸に刻みながら、子どもたちと共に日々の学校生活を歩んでいきたいものです。
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