教室の「前向き一斉配置」が、子どもの幸せを遠ざけているかもしれない理由

精神科医である樺沢紫苑先生の著書に触れ、私たちは「幸せ」を脳内物質から科学的に理解できるようになりました。先生は、幸せを3つの幸福物質に対応する「三段重」として捉え、明確な優先順位を示しています。
1. セロトニン的幸福(健康):心と体の安らぎ、健康。
2. オキシトシン的幸福(つながり、愛):人間関係、絆、コミュニケーション。
3. ドーパミン的幸福(成功、達成):目標達成、成功、興奮。
そして、この幸せには順番があります。土台となるのは健康(セロトニン)、その上につながり(オキシトシン)があり、最後に成功(ドーパミン)が乗るという構造です。
この理論を、100年前から変わらない日本の学校の教室のデフォルトの座席配置に当てはめてみたとき、私はある種の危機感を覚えます。
100年前の座席配置は「つながり」を無視していないか?
私たちが慣れ親しんだ「前向き一斉座席配置」。これは、教師の言葉に一斉に耳を傾け、知識を効率よく吸収し、テストで成果を出す、つまりドーパミン的幸福(成功・達成)に最適化された配置と言えます。
しかし、この配置では、生徒同士が互いに顔を合わせる機会は激減します。コミュニケーションは隣の席か休み時間に限定され、「つながり」を深めるには非常に非効率です。
ここにこそ問題があります。樺沢理論が示すように、「幸せの三段重」において、ドーパミン的幸福は最も優先度の低い、一番上の重箱なのです。
幸せの土台を築くのは「コの字型」と「グループアイランド型」だ
一方で、最近の教育現場で導入が進む「コの字型座席配置」や「グループアイランド型座席配置」は、生徒が互いの顔を見て、話し合い、協力し合うことを前提としています。
この配置が最大限に引き出すのは、まさしくオキシトシン的幸福(つながり、愛)です。
• 顔と顔を合わせることで、自然と会話が生まれる。
• 協力して課題を達成する中で、絆や信頼が生まれる。
• 他者とのつながりから得られる安心感は、心の安定にもつながる。
オキシトシン的幸福は、ドーパミン的幸福よりも優先順位が高い、幸せの強固な土台です。この土台がしっかりしているからこそ、多少の失敗や挫折があっても、立ち直り、再び成功(ドーパミン)を目指すことができるのです。
世に問いたい:私たちは何を優先すべきか?
今、学校が子どもたちに提供すべきは、知識の詰め込みによる一時的なドーパミン的幸福だけでしょうか?
そうではありません。
私たちが目指すべきは、健康を土台に、確かな人間関係という絆(オキシトシン)を築き、その上で、学習やスポーツの達成感(ドーパミン)を追求できる、バランスの取れた幸福ではないでしょうか。
教室の座席配置を変えることは、単なるレイアウトの変更以上の意味を持ちます。それは、「私たちは、子どもの幸せの何を優先するのか?」という教育哲学そのものを世に問い直す行為なのです。
今こそ、学校は100年前のデフォルト配置を見直し、「つながりの幸福」を育む配置へと大胆に転換するべきではないでしょうか。それが、子どもたちを真の幸せに近づける第一歩だと、私は強く確信しています。

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