授業のねらい
身近にある「ただのもの」が、学びによって新しい価値や意味をもつことに気づかせます。
母と息子の会話をもとに、学ぶことの意義を実感し、学び続ける自分への肯定感や、他者の学びへの尊重の気持ちを育みます。
授業の流れ
1. 導入:机の上にコップを置く
(透明なコップに水を半分ほど入れて提示)
教師:「これ、何に見える?」
子ども:「コップ」「水」など当たり前の答え。
教師(少し笑いながら):「そうだよね、ただの水。でも、今日はこの“ただの水”が、ちょっと特別に見えてくるかもしれないよ。」
2. 発問:もし勉強なんかしなかったら…
教師:「ねぇ、みんな。『どうして勉強なんかしなきゃいけないの?』って思ったこと、ある?」
(何人かの反応を拾う)
教師:「じゃあ、もし全く勉強しなかったら、このコップと水は、どんなふうに見えるだろう?」
→ 子どもたち:「ただの水」「飲み物」…と答える。
3. 展開①:学びで変わる水の見え方
教師(黒板に順に書きながら):
- 美術を学べば…この水の反射やゆらめきを絵にできる
- 音楽を学べば…コップを指で弾いた音から曲を作れる
- 理科を学べば…なぜ水がこぼれないか、素材や形の秘密がわかる
- 道徳を学べば…大事に扱う心が育つ
- 国語を学べば…この水の様子を美しい言葉で人に伝えられる
- 哲学を学べば…「この水って何だろう?」と深く考えられる
(水を見つめる目が少し変わってくる瞬間)
4. 展開②:心を揺さぶる母の言葉
教師(声を落として語るように):
「ある先生が、自分の息子にこう話したんだって。
『でも──もし、何も学ばなかったら。このコップの中の水は、ただの“水”でしかなくなる』」
(間をあけて水を見せる)
5. ペア交流:身近な「ただのもの」
教師:「みんなの周りにも、ただのものに見えるけど、学ぶことで意味や価値が変わるものってあるかな?」
1〜2分ペアで話す。
→ 例:
- 雲(理科で学べば天気のサインに)
- 道端の草(観察すれば食べられる植物や薬草かも)
- 古い写真(歴史や家族の物語が見えてくる)
6. 全体共有:価値の再発見
何人かの発表を板書し、教室全体で「学びが世界を広げる」ことを確認。
7. まとめ:人に結びつける
教師:「モノも、人も同じだよ。
“ただのクラスメイト”に見える人も、話して知れば、すごい特技や優しさを持っているかもしれない。
学ぶって、世界の見え方を変える魔法なんだ。」
この授業のポイント
- 視覚の固定観念を揺さぶる導入:水入りコップをただ見せ、「何に見える?」で子どもの感覚を引き出す。
- 母の言葉の引用:感情を揺らす実話的エピソードで心に刻む。
- 生活との接続:ペアで自分の身近な事例に置き換えることで内面化。
- 人への転換:「モノの話」から「人の価値」へ視点を広げる。
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