精神科医・作家の樺沢紫苑先生は、人の幸福をつかさどる脳内物質を「セロトニン的幸福」「オキシトシン的幸福」「ドーパミン的幸福」の3つに整理して語っています。健康を土台に、人とのつながりがあり、その上で成功がある。この順番を踏まえると、日本の学校システム自体が実は「幸福の脳科学」に合致していることが見えてきます。
1. 朝のリズムとセロトニン的幸福
朝起きてご飯を食べ、決まった時間に登校する。これだけで体内時計が整い、セロトニンが活性化します。樺沢先生が提唱する「朝散歩」に通じる習慣が、学校生活のスタートには組み込まれているのです。
2. 通学団や仲間との関わりとオキシトシン的幸福
通学団や友達との登校は、仲間意識や安心感を生み、オキシトシンが分泌されます。人とのつながりを日常的に持つ仕組みそのものが「幸せホルモン」を引き出しているのです。
3. 授業とドーパミン的幸福
授業や学習の達成感は、ドーパミンを刺激します。できるようになる喜び、分かる楽しさは、まさに「やる気ホルモン」の源泉です。
4. 教室環境と幸福物質
ただし課題もあります。いまの「全員前向き」の座席配置では、緊張や逃避行動に関わるノルアドレナリンが優位になりがちです。子どもたちが学びから逃げたくなる背景には、こうした脳科学的な要因もあるでしょう。コの字型やアイランド型の座席配置にすれば、子ども同士のやりとりが増え、オキシトシンやドーパミンがもっと引き出されるはずです。
5. オンライン学習への違和感
「学校に行かなくてもZoomで学べばいい」という意見がありますが、それは幸福のシステムを理解していない発想です。オンラインで得られるのはドーパミン的な情報処理だけ。セロトニン的幸福やオキシトシン的幸福が著しく損なわれてしまいます。子どもを本当に幸せにしたいなら、3つの幸福のバランスを意識すべきです。
幸福の順番と学校の意味
樺沢先生は「まず健康(セロトニン)、次に人間関係(オキシトシン)、そのうえで成功(ドーパミン)」という順番の大切さを強調しています。これは、マズローの欲求5段階説と似ているようで異なり、上位欲求を目指すよりも「下位の幸福を大事にする」という逆転の発想です。
私自身もかつては「成功=ドーパミン的幸福」を第一に追い求め、うまくいかない経験を重ねてきました。だからこそ、「健康→つながり→成功」という流れの重要性を実感しています。
まとめ
学校は単なる学力養成の場ではなく、セロトニン・オキシトシン・ドーパミンという「3つの幸福ホルモン」を自然に引き出すシステムとして設計されています。だからこそ、子どもを幸福に導くためには座席配置や人間関係のデザインも含め、「幸福の脳科学」を意識する必要があります。
「子どもが学校に行く意味」とは、まさにこの幸福の順番を体験することにあるのです。
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