これは決して大げさな話ではありません。
座席配置――それは、環境であり、子どもの学びや関わり方を決定づける「見えない檻」です。
生徒主体?選手主体?――けれど現実は「受け身」
「生徒主体」――。
多くの学校が掲げる理想です。
しかし、全国津々浦々の教室を覗けば、そこに広がっているのは前向き一斉座席配置。
教師が教壇に立ち、子どもたちは黙って前を向き、指示を待つ――。
これが日本の学校の“当たり前”です。
「選手主体」――。
サッカー界でもよく耳にする言葉です。
けれど、全国津々浦々での様子はどうでしょうか?
コーチの周りに輪になればまだ良い方で、ほとんどはコーチの話を受け身で聞くところからスタートします。
主体性をうたいながら、現場のデフォルトは完全に受け身。
この矛盾に気づかないままでは、本当の意味で「主体性を預ける」ことなど絶対にできません。
「コの字型はダメ」という声に潜む危うさ
最近、YouTubeでこんな動画を目にしました。
「通常の座席配置がコの字型?大丈夫?」
「コの字型の欠点を知っていますか?」
どうやら「コの字型には欠点がある → だからダメだ」という主張のようです。
一見、筋が通っているように思えます。
しかし、これは極めて時代遅れで説得力を欠く考え方です。
その理由は大きく7つあります。
1. 環境を軽視している
座席配置は、ただの家具の並びではありません。
環境そのものが、子どもの学びや思考・対話を左右する決定的な因子です。
「授業方法だけで主体性を育てられる」という発想自体が古いのです。
2. デフォルトバイアスを疑わない
前向き一斉座席配置は、100年以上ほぼ変わっていません。
それを「当たり前」と思い込んで疑わない――これこそがデフォルトバイアスです。
100年前の価値観に縛られたままでは、新しい学びは生まれません。
3. 慣習への固執
「コの字型はダメだ」と断じるのは、過去の失敗や批判例だけを見て、これからの可能性を閉ざしてしまう行為です。
4. 一面的な否定
確かにコの字型にも課題はあります。
しかし、それだけを理由に全面否定するのは短絡的です。
「対話が増える」「視線を共有できる」などの利点を完全に無視しています。
5. エビデンス不足
YouTubeでよく見られるのは感覚的な断定です。
もしコの字型を否定するならば、実践データや比較研究を示すべきです。
しかも――ここが重要です――。
子どもたちは何年も年間1,000時間以上、前向き一斉配置を経験してきたとする。
その影響を受けた学年で、わずか1〜2週間コの字にしただけで「うまくいかない」と結論づけるのは不公平であり、ズルい。
同じだけの時間、つまり何年もコの字やアイランド型を続けてから比較するのが本来のエビデンスです。
数時間の実験で「ざわついた」「集中できなかった」と言うのは、環境の影響を理解していない証拠です。
6. 未来志向が欠落
これからの教育で鍵となるのは、非認知能力――思考力・対話力・自律性です。
「欠点があるからダメ」と切り捨てるだけでは、この未来に必要な能力育成の視点を完全に失っています。
7. 代替案を示さない
「ダメだ」と言うだけでは何も始まりません。
未来を切り拓くには、どう改善するか・どう続けるかの提案が必要です。
前向き一斉の「見えない欠陥」
コの字型を否定する人は気づいていません。
前向き一斉配置の教室では、
• 子どもが「聞いているフリ」をしていても教師は気づきにくい
• 前の人の頭しか見えず、友達の表情や考えはわからない
• 取り残されても“目立たずに済む”ので、学びから脱落しやすい
つまり「静かに見える」だけで、実際は学びからこぼれ落ちている子どもが大量にいるのです。
これは100年以上続いてきた構造的な問題です。
主体性は授業法ではなく、環境から
多くの人は「主体性は授業法で育てるもの」と思い込んでいます。
しかし、それは大きな誤解です。
主体性は、子どもの外側――環境から育まれるものです。
なぜなら、非認知能力は「知識」ではなく「経験」からしか身につかないからです。
コの字型やグループアイランド型の配置は、自然に
• 「自分で考える」
• 「仲間と対話する」
• 「関わり合いの中で成長する」
という経験を生み出します。
逆に前向き一斉配置では、教師の話を受け取るだけの受け身経験しか得られません。
環境を変えれば、未来が変わる
サッカーでも教育でも同じです。
前向き一斉配置を変えない限り、サッカーで必要な非認知能力も、社会で必要とされる主体性も、決して育ちません。
だから私はあえてこう言います。誇張表現です。
「授業を上手くする必要なんてない。
まずは座席配置という“環境”を変えてくれ!」(もちろんこれから少しずつ上手くなってほしいです)
未来を変える第一歩は、教壇でも、黒板でもありません。
机と椅子の並び替え――そこからすべてが始まるのです。
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