絵本作家・鈴木のりたけさんは、ご自身の子どもたちの不登校経験を語る中で、「原因はあなたのせいじゃない」と伝えることの大切さを強調しています。子どもや保護者が自責の念にとらわれず、安心して過ごせる居場所があることが第一歩であると。
私たちが向き合う学校もまた、子どもにとっての居場所です。けれども、教室が常に「前向き一斉」の座席配置で、子ども同士が自然に関われない状態では、安心やつながりは生まれにくいのではないでしょうか。
一人で学ぶことが必要な時期もあります。しかし、分からないときに「教えて」と言えることこそ、学びの支えになります。そのためには、顔を上げれば自然と目が合い、微笑み合える座席配置や環境が重要です。振り返って声をかけるのではなく、目線がそろったところで対話できる。そうした物理的な環境が、子どもの心に安心をもたらし、オキシトシンなどの幸福感をもたらす脳内物質を引き出します。
不登校の背景には、社会全体のシステムや価値観が関係しています。しかし「社会を変える」のは大きな挑戦でも、教室から小さな変化を始めることは可能です。まずは座席の形、関わり方のデフォルトを問い直すことから。子どもが「分からないから教えて」と自然に声を出せる空間づくりこそ、私たち教師にできる具体的な提案です。
子どもにとっての「居場所」は、遠いフリースクールや特別な環境だけではありません。目の前の教室もまた、安心して学び合える居場所になり得るのです。その一歩を、私たちがつくり出していきましょう。
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