たった一歩が、教室を動かす。
時に令和のある学校。
ひとりの教師が、小さな挑戦を始めようとしていた。
毎朝の教室。笑顔が消え、子どもたちの目はどこか泳いでいた。
発言は一方向に流れ、空気は淀んでいた。
「何かを変えたい」
そう思った教師が、まず手をつけたのは——ジョギングだった。
区切ることで、走り切れた
始まりは、団地の一周。
三日目には、途中で歩いてしまった。
しかし、ある日、彼は気づく。
「電柱5本を走り、1本分を歩く」。
ゴールを細かく区切ることで、最後まで走れるようになった。
この小さな成功体験が、やがて教室の変化につながっていく。
マラソン選手の言葉に学ぶ
思い出されたのは、マラソン選手・有森裕子の言葉。
42.195kmなんて、走れるわけがない。
だから私は、電柱一本一本をゴールにして走った。
ゴールは、遠すぎてはいけない。
だから、今日できる「一つのこと」をやる。それでいい。
その一歩が「机の配置」だった
「まずは、机を動かしてみよう」
誰もが見逃すような、その一歩が——教室に新たな風を呼び込んだ。
コの字型座席、静かな革命
- 顔が見える
- 声が届く
- つぶやきが拾える
前しか見えなかった子どもたちが、互いに視線を交わすようになった。
教師の声かけも変わった。
- 「グー・ペタ・ピン・サッ」で姿勢を整える
- 「その意見、どう思う?」と問いを横に投げる
- 教室に入るとき、まず笑顔で
そのひとつひとつが、教師自身の“型”を形づくっていく。
夏休み直前、だからこそ
今は夏休み前。
うまくいかなくても、すぐに切り替えられる。
よくなければ、またリセットすればいい。
チャレンジするには、これ以上ないタイミングだった。
そして——
たった一つの声かけ。
たった一つの机の移動。
その“たった一つ”が、やがて大きなうねりになる。
成功か、失敗かは、まだわからない。
だが、確かに教室は動き出した。
ひとりの教師が起こした、小さな変化。
そしてそれは——
静かなる革命の、始まりだった。
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