「静かに」と言う前に! プロ教師が仕掛ける”自律”を育む帰りの会トーク術

学級経営でよくある悩みの一つが、「静かにしなさい」と言わないと子どもたちが落ち着かない、指示待ちになってしまう、という状況です。
しかし、ベテラン教師の言葉がけには、単に静かにさせるだけでなく、子どもの「気づき」「思考」「自律的な行動」を引き出す仕掛けがあります。
今回は、帰りの会での教師の具体的なトークを分析し、岩下修先生の提唱する「AさせたいならBと言え」の視点から、その教育技術を徹底解説します。
1.教師のトークに見る「本当に育てたい力(A)」
この教師の言葉がけは、表面的な「静かさ」ではなく、子どもの内面的な成長にフォーカスしています。
究極の目標(A):自律的な聴く姿勢の確立
教師が本当に達成したい「A」は、ズバリ指示待ちからの脱却です。
• A:させたいこと:「静かにしなさい」という指示待ちの状態から抜け出させること。
• ねらい:「静かに」と言われなくても、教師の様子や場のサインから自分で状況を判断し、考えて行動できる子を育てること。
2.【AさせたいならBと言え】プロの教育技術分析
教師は目標(A)を達成するために、どのような「Bの言葉」を使い、子どもたちに「気づき」を仕掛けたのでしょうか?
① ポジティブな事実で安心感を作る
• A(させたい): 落ち着いた状態で話を聞かせたい
• B(と言え): 「食器の音を立てないというのは前回に比べてみんなとても静かに返却していたね。」
• 話術のポイント: いきなり注意するのではなく、まず別の行動で「できている部分」を具体的に称賛し、肯定的な雰囲気を作ります。「君たちはやればできる」という信頼感を土台に置きます。
② 具体的な行動描写で模範を示す
• A(させたい): 教師の存在に気づき、静かに話を聴く姿勢をとらせたい
• B(と言え): 「一番後ろの子は、自分が前に立ったら、こちらに気づいてさっと見てくれたよね。話したいなあ、聞いて欲しいなあって思ったとこだったんだよね。ありがとう。」
• 話術のポイント: 模範的な行動を「褒める」のではなく「具体的に描写」しています。「あの行動が正解だよ」と間接的に伝えています。これにより、子どもたちは「次に何をすべきか」を明確に理解できます。
③ 逆説的な問いかけで価値を考えさせる
• A(させたい): 指示なしで静かになることの価値を子ども自身に理解させたい
• B(と言え): 「静かにっていう言葉はいるかなあ?」「静かにと言われないと気づけなくなっちゃうって勿体無い気がするんだよねえ。どう思う?」
• 話術のポイント: 「静かにしなさい」という指示の存在そのものを問いかけ、子どもに「自律できることの素晴らしさ」を内省させています。
④ 「行動のプロセス」を具体的な期待にする
• A(させたい): 次から自律的に静かにさせたい
• B(と言え): 「次回私がここに来た時は、静かにと言う気づかせ方じゃなく、あっ?先生が話したさそう、聞いて欲しそうって皆が気づいて考えて行動してくれる人が増えていると嬉しいなあ。」
• 話術のポイント: 単に「静かにして」と願望を伝えるのではなく、「気づく」→「考える」→「行動する」というプロセスを具体的な目標として設定し、子どもを共同の解決者として促しています。
3.若手教師向け:「こうさせたいならこう言え」実践集
このトーク術から学べる、「指示」を「気づきを促す言葉」に変える実践例です。
• A:ざわついている子を落ち着かせたい
• B:「〇〇さんが気づいて考えて行動してくれたように、あと少し聴く準備ができたら、すぐに始められるよ」
• (静かにする行為を「気づき・思考・行動」に分解して伝える)
• A:指示なしで静かになれた状態を定着させたい
• B:「みんな、先生が前に立っただけで、スッと聴く態勢になれたね。それはすごいことだね。」
• (指示なしで静かになれた「事実」と「達成感」を強調し、褒める)
• A:子どもにもっと深く内省させたい
• B:「先生が何も言わずに、みんなで聴き合いを始められたら、どんな良いことがあると思う?」
• (静かになった先のメリットを子ども自身に考えさせる)
「静かに」という指示は、短期的な効果はあっても、子どもの自律的な成長を妨げかねません。「AさせたいならBと言え」の視点を取り入れ、子どもの内面に働きかける言葉がけを意識して、プロの教育技術を磨いていきましょう。

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