「自由進度学習」以前に変えるべきは、教室のデフォルトだ──樺沢紫苑さんの「幸せホルモン」から考える

昨今、自由進度学習がにわかに脚光を浴びている。しかも「単元内」という枠組みを付けて、従来の授業との折り合いをつけようとする動きも多い。
だが、その光景を見るたびに思い出すのは、あのシェークスピアの言葉である。

「あなたの言うことは正しい。ただし、前提が間違っていること以外は。」

まさに今の教育界の典型だろう。
自由進度学習そのものが悪いのではない。だが、その前提となる「安心・安全な教室空間」が整っていない中で導入しても、子どもたちの主体性は育たない。むしろ、不安と孤立を生む自由になりかねない。

まず変えるべきは「座席配置」というデフォルト

安心のスタートは、学びの方法ではなく、空間の設計にある。
まずは「一斉・前向き座席配置」という日本的デフォルトを外し、コの字型やグループアイランド型に変えること。それだけで、教室は呼吸を始める。

教師の負担はない。
0.2秒で変わるのは、椅子の角度ではなく、子どもたちの脳内物質だ。
人と目が合い、表情が見え、声が届く。たったそれだけで、セロトニンとオキシトシンという「幸せホルモン」が自然に分泌される。
精神科医・樺沢紫苑さんが指摘するように、この2つの物質は「安心」「信頼」「つながり」の感覚を作り出す。つまり、学びの土壌そのものだ。

教師の「100手間」を超える、教科書とノートの力

佐野良子氏は「自由進度学習」の難点として、教師の準備の負担を挙げている。確かに、一手間かけることは教育の本質でもある。
プリントの準備場の準備などだ。
現場にみわわ置いている人ならわかると思うが、どこにその時間があるか。

暇ではない。

プリントはあなたが作ってあなたが良いと思ったと言うフィルターしか通っていない。

分かるだろうか?

責任者はあなた。

あなたのプリントはそこまで耐えうるものか?

逆に、教科書はすでに100手間以上をかけて設計されている。何十人、いや、100人を超える人のフィルターを得ている。そこに「ノート」という個の思考空間が加われば、それだけで数倍の代用ができる。
つまり、土台を整えずに“方法”に飛びつく必要はないということだ。

まず「前提」を整えることから

「自由進度」「個別最適」「探究」──どれも響きの良い言葉だ。だが、それらは「安心」「つながり」「笑顔」という前提が整ったうえでこそ機能する。
樺沢さんの言う幸せの三要素(①自己成長、②つながり、③貢献)も、まずは教室という安心の場があってこそ実現するものだ。

学校は幸せになるためにある。
そのための第一歩は、教室の空気を変えること。
座席の向きを、ほんの少し変えることから始めよう。
0.2秒で変えられる幸せづくりを、まずはそこから。

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